平凡学徒備忘録

Know your enemy with warm heart and cool head.

上手く交渉をするには?~ゲーム理論の全体像と最後通牒ゲーム~

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ゲーム理論という言葉を聞いたことがあるだろうか。経済学の比較的新しい一分野であり、人々の行動を考える理論である。前回絵師の報酬価格決定について考える記事でこれについて触れたが、今回はゲーム理論を知らない人のために、その全体像と応用例について書いていく。

さて、ゲーム理論というからにはスーパーマリオブラザーズで最速クリアする方法を考えるのかというと、そうではない。ここでいうゲームとは「二人以上のプレイヤーそれぞれの選択がお互い影響しあう状況」を指す。なので、ゲームでいえばチェスとかじゃんけんに近い(遊戯王MtGなんかもそうだ)。チェスは相手の駒の動きに応じて自分の駒を動かさねばならないし、じゃんけんでも、この手を出せば勝つということはなく、どちらも相手の手がこちらの手に影響する。そして、相手の出方を考えないで勝つことはできない。

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絵師の報酬はどのように決まるか?~交渉とゲーム理論~

前回選択肢がないということはどのように危険かという話をしたが、今回は前回の選択肢の話を応用して、仕事の報酬決定のプロセスについて考えていく。未読の方は読んで、どうぞ。

 

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選択肢の話は投資だけに留まらず、音楽や絵画などアートの報酬決定についても言える。Twitterでは「原価だけ見て作品を買い叩くな!この作品を作る技術を得るのにどれだけのコストを払ったかわかっているのか!」という意見が見受けられるが、この事態についても、選択肢の考えが応用できる。 

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何故人は詐欺に引っかかってしまうのか?~限定された選択肢~

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例えば、チョコケーキを買おうと近所のスーパーマーケットに行ったとき、その店ではショートケーキしか取り扱っていなかったらどうだろう。あなたがもしチョコケーキを食べたいと思っても、取り扱われていないので買うことができない。もしあなたが作り方を知っており、材料とキッチンがあるならば、自分で作るという手もある。しかし、手を怪我していたり、材料が売り切れていたり、キッチンが無かったり、料理がてんでダメだとしたら、残念だが、チョコケーキはあきらめるしかない。ショートケーキを食べるしかなく、チョコケーキを食べたときと同じような満足感は得られない。 

選択肢が限定されているというのはこういうことだ。ただ、ケーキの話なら諦めも簡単につくし、ストレスがそこまで無いだろうが、もっと深刻な状況で選択肢がない時、例えば、マンション投資のセールスを受けたりした時には、より真剣に問題に向き合わねばならない(※一応断っておくが、別にマンション投資全部が損だとも、そういったセールスマンが全員詐欺師だとも考えていない。誤解なきよう)。 

 

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何故経済学で数学が必要なのか ~経済学的思考法について~

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 経済学は、文系学問の中で、もっとも数学を用いる学問であるといえよう。経済学部は一応世界史、日本史などの履修が必要な文系学部であるが、数学2Bまでを入試科目に設定している大学も少なくない。大学での経済学講義では、入門レベルならまだしも、標準レベルの授業になると微分積分は必須であり、マクロ経済学では扱う式がとても複雑になってくる。さらに、経済に関する各種データを正しく処理、分析するのにも数学的処理は不可欠となる(社会学でも統計は必須の知識である)。

 しかし、大学、もしくは高校で経済学の勉強をしていく中で、統計データを扱うならまだしも、そうでない経済学の授業で数学を使う必要があるのであろうかと疑問を持ったことはないだろうか。授業では需要供給曲線について教えられるが、道行く人に声をかけてある社会の需要曲線を描くことはできないし、第一彼らが正直に答えてくれるとも限らない。それにある商品がどのくらい欲しいかなんて状況によって変わってくる。そもそも人々の幸福度なんて数値に直して測れるものなのか?などなど、考えていくほど数学を学ぶ意義がどんどんわからなくなってくる。

 今回は、何故経済学部生が数学をやらねばならないのか、すなわち経済学における数学の役割と、そこから見えてくる数学の特徴という2点について述べていく。少し前にこんな記事も書いたので、一緒に読むと尚のこと理解できるだろう。

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営業インターン(笑)に行ったら品川駅でぶっ倒れた話 第2回

前回の続きである。まだ未読の方はこちらから

 

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(続き)その日は、インターン前に知人と会っていたが、どうにも嫌なことを言われ、業務に向かう前から不機嫌であった。お前の考えてることは間違っているだの、自分を否定されるような心持ちがしたが、反論の言葉も思いつかず、その気力もなかった。

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営業インターン(笑)に行ったら品川駅でぶっ倒れた話 第1回

「合縁奇縁」や「一期一会」など、人との縁にまつわる言葉はたくさんあり、大抵縁は大切にすべきであるというような意味合いが込められている。ただ、思わぬ出会いが人生を豊かにすることがあるが、逆もまた然りである。世の中には不幸になる黒い縁が至る所に張られており、迂闊に動くとそれに絡めとられることも少なくない。今回は私の絡めとられた悪縁について書いていく。

注意として、これはあくまでも個人体験にすぎず、業界全体について述べたものでも、どこかの意見を代表するものでもないことをご承知いただきたい。また、その業界に努めていらっしゃる方々は不愉快になるかもしれないが、別にあなたを責めたいわけでも、否定したいわけでもない。単に1サンプルを元に自分の考えたことを述べただけである。気に障ったら「世間知らずの若造がほざいている」とでも思って無視した方がお互いにとって良い。

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経済学って無駄じゃない?~経済学概論と経済学的思考法、学問の実用性について~

文系学問は常に役に立たないと言われている。文学なぞ社会に出て役に立つのか、政治家にならないのに政治学をやるのか、などなど。私の専攻は経済学であるが、これも文系学問の一つであり(の割には数学を多用する)、「抽象的すぎる」「非現実的だ」などの批判にさらされている。しかし巷には「社会人の為の経済学入門」などといった本が溢れている。となると経済学もまんざら役立たないということもなさそうだ。

今回、経済学を2年以上勉強してきた身として経済学の全体像を見直し、その役立て方を考えてみる。既に経済学を学んでいる人も、これから学ぼうとしている人も、経済学について微塵も知らない人も、これを読めばその全体像と思考法、役立て方がつかめると思う。

 

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