平凡学徒備忘録

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政府機能を考える 第2回~政府機能と政治を変える方法~

  • 政府の4機能
  •  ①資源の配分効率の改善
  •  ①´ 経済成長促進
  • 所得再分配
  • ③経済安定
  • 政治を変える方法①:ロビー活動
  • 政治を変える方法②:NPONGO組織

 

前回の記事で、現行の政治システムの避けられない欠点を挙げ、それを乗り越えるには、政府規模を縮小すべきだと述べた。

 

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今回は、じゃあそもそも政府はいかなる機能を持ち、そしてどうやってそれらを民間が肩代わりできるようになるかについて述べていく。

政府の4機能

経済学においての政府の存在意義とは、市場内の自由な行動だけでは解決できない問題を解消することだと考えられている。そして、その問題とは以下の(3+1)つに大別される。

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タバコの問題をシンプルに解決する~負の価値財、外部性と政治機能~

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<目次>

  • 「即禁止」は大抵良くない
  • そもそも何が問題になの?
  • 外部性対策の大まかな枠組み
  • 対策は政府よりも民間で行うべき
  • 具体的な政策提言

 

都議会がタバコに関する条例案があることを公表したことを受けて、タバコについての論議がまたもや盛りあがりそうだ。特に東京は2020年のオリンピックに向けて、急ピッチで規制が進められていくだろう。既に狭い喫煙者の肩身がより狭くなっていきそうだ。

消費されることが望ましくない財を、経済学用語で負の価値財という。昨今のタバコへの風当たりをみるとタバコは負の価値財であり、その他にも酒類や麻薬、ポルノ作品なんかもこれに入るだろう。

しかし、消費されることが望ましくないからといって即座に法律レベルで禁止すべきと断じてしまうのは気が早すぎる。

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政府機能を考える 第1回~政治システムの欠点~

<目次>

  • 投票システムの抱える欠陥 
  • 自分の意見を反映させたい、でもどうやって? 
  •  間接民主主義の抱える欠点
  •  カネと公平性の問題
  • トレードオフを抜け出す方法

 

衆議院選が近くなってきた。外に出るとあちこちで選挙カーの上で演説をしている声が聞こえてくる。「地域に根差した政策を~」「国民の為の政治を~」などお決まりの言葉が駅前に、住宅街に響き渡る。
そして色んなメディアで、どこの政策はこうだ、どこに投票すべきだ、どこはダメだ、アイツはどうだと選挙について伝えるし、嫌が応にも選挙があちこちで話題に上る。


そしてこの時期によく目にする意見が、「政治が良くなれば社会が良くなる」「国民皆が政治に関心を持ち、選挙に参加すれば世の中は良い方向に変わる」というものだ。勿論参政権は長い歴史の中で獲得された国民の権利だし、自分の望む方向に変えてくれると思う人のために使えるものを使っておくのは合理的だ。少なくとも棄権という手段では自分の望む方向に政治を変えることはできないだろう。

 

しかし、投票率減少などに表れているように、投票システム、並びに政治を意味がないものだと感じている人は多いのではないだろうか。

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貯金、ダイエット、勉強に共通するものってなんだ?~行動経済学とその応用~

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今年のノーベル経済学賞シカゴ大学のリチャード・セイラー教授に決まった。彼が受賞した理由は

「個人は完全に合理的には行動できないこと、社会的な背景を踏まえ選択すること、そして自分自身をコントロールできないことなど、人間の持つ特徴が個人の経済的な決定や市場にどのように影響を与えているかを示した」

とのことである(NHK NEWS WEBより引用
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171009/k10011172861000.html)。

この、「人は目先の利益や一時の感情にも基づいて行動する」という人の非合理性を経済学に持ち込んだのがセイラ―教授の専門である行動経済学だ。
ただ、これだけ聞くと行動経済学とは人々がどのように行動するかを分析するだけで、実社会でどのように役立つのかが分かりづらいかも知れない。経済学も人々の行動を分析する学問であり、その有用性にはいつも疑問が投げかけられてきた。なのでその延長線上にある行動経済学も大して実用性はないだろうと考える人がいるのは容易に想像できる。
今回は、行動経済学とはどんな学問であり、それがどのように応用できるかについて述べていく。

突然だがここで問題。貯金、ダイエット、勉強、禁酒や禁煙。これらに共通する特徴はなんでしょう。
色々あるとは思うが、まず言えるのは、やれば後々に自分の利益になるということ。そして、皆その達成に向けた行動をなかなか起こさないという事だ。

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メンタル強化本のパワーは恐ろしいぞ

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賢く「言い返す」技術: 人に強くなるコミュニケーション (単行本)

賢く「言い返す」技術: 人に強くなるコミュニケーション (単行本)

 

 この本はそのタイトル通り、身の回りにいる困った人、例えば些細な事でキレる人、常に周りの人を見下す人、構ってちゃんなどに対して言い返す術について説いた本だ。

この世の悩みの多くは対人関係に起因するものであると言ってよいだろう。だからこそこういう対処術を知っておくのはとても重要だと思う。世の中には聖人君子もどうしようもない下劣な人も存在する。さらに厄介なことに、どちらの面も持ち合わせている人も存在する。

精神的な被害は勿論物質的にも身体的にもダメージをもたらす。断るのが苦手な人は詐欺に遭って金銭的に苦しむことになるし、いつも叱責や罵倒を受けている人は鬱になりかねないし、最悪死に至る。

いつの時代もこの手の悩みは耐えないので、相手に屈しないようになる、強くなる系の本は需要があり、形を変えて出てくる。「いつも一緒にいて嫌な気持ちにしてくるアイツに、ガツンと切り返せたらスッキリするのに」「押しに弱く、いつも損を食っている気がする。何とか自分を守りたい」。このような気持ちからメンタル本に手を出す人は容易に想像できるだろう。

ただ、この本を読んで思ったのが、この手の本を読んで、読者の攻撃性が助長されないかということである。

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経済学をざっくりまとめてみる~自由経済の限界と新分野~

前回は貨幣の機能と、市場での自由取引がどのように効率的な配分を達成するかについて考えた。

 

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確かにそれらのメカニズムは競争原理による商品の高品質低価格化を実現するし、最適配分を達成すると考えられており、経済体制の標準になっている。物々交換や配給のみによって経済全体を支えている国はないし、かつてソ連が計画経済という政府主導の生産、分配を行おうとしたが、結果1991年に崩壊してしまった。

と経済体制の標準である市場メカニズムだが、これも残念ながら万能ではなく、必要なものが生産されず、経済活動がうまくいかないこともある。そして、市場の限界について人々が気づき、それをきっかけに新たな経済学の分野が誕生した。

 

まず、アメリカの中古車市場には多くの粗悪品が出回っているという指摘から始まった情報の経済学という分野だ。それまでの常識で言えば、市場競争の結果粗悪品は売れないので市場から消え、質の良い低価格な商品が残るはずである。にも関わらず実際には粗悪品ばかり残る逆淘汰という現象が起きてしまった。

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経済学をざっくりとまとめてみる~市場と経済学の誕生~

経済学というものについていくつか記事を書いてきたが、一口に経済学といってもその分野、内容は多種多様である。経済学という名前を冠している以上、何かしらの形で経済、つまり財、サービスの生産、ならびに交換といった行動について分析するものなのだが、発想や分析手法は異なる。

そもそも、分析対象である経済とは何なのか。経済というのは一言で表せばモノの分配ネットワークだ。商品を売買するという形で財、サービスが必要な人のもとに届けられることを経済活動というし、経済が活発になるというのはそれらのやり取りが多くなり、欲しいと思う人がそれを得られるようになるという状況である。

経済学の目的はそれらモノのやり取りを通じて社会全体の満足度、効用を最大化することである。なので、資源の効率的配分というのがいつも問題になる。財、サービスがあちこちに移動した結果、皆がそれぞれに望むものを手に入れられた。これが効率的ということだ。例えばある人にとって余分なモノでも、誰かがそれを欲しているかも知れない。ならば欲している人に届けられたほうが、社会全体で見たときの効用は大きくなる。

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