無条件で現金配布、あなたは働きますか? 第2回~救われるべき人、そうでない人?~
- 「無条件で給付」がカギ?
- 社会保障と「理想の貧困者」
- 貧困は知能を13ポイントも下げる
- シンプルな設計、厳密な検証
前回は、ベーシックインカム(BI)のメリットやそれが解決するであろう問題について全体像を述べてきた。まだ読んでいない方はどうぞ。
今回は、BIの「現金の無条件配布」という特徴を切り口に、福祉のあり方について述べていく。
「無条件で給付」がカギ?
前回、BIを実際に行ってみた結果について、似たような制度が真逆の結果をもたらしたことに言及した。ロンドンやオランダの実験ではBIによって人は怠惰にならず、むしろ前向きになり、ホームレスが社会的に望ましい生活を送るようになったと示している一方で、BIと似たスピーナムランド制度は人の勤労意欲を削ぎ、社会が荒れるという真逆の結果に終わったのである。
続きを読む無条件で現金配布、あなたは働きますか? 第1回~労働環境の変化とベーシックインカム~
政府機能を考える 第2回~政府機能と政治を変える方法~
前回の記事で、現行の政治システムの避けられない欠点を挙げ、それを乗り越えるには、政府規模を縮小すべきだと述べた。
今回は、じゃあそもそも政府はいかなる機能を持ち、そしてどうやってそれらを民間が肩代わりできるようになるかについて述べていく。
政府の4機能
経済学においての政府の存在意義とは、市場内の自由な行動だけでは解決できない問題を解消することだと考えられている。そして、その問題とは以下の(3+1)つに大別される。
続きを読むタバコの問題をシンプルに解決する~負の価値財、外部性と政治機能~
<目次>
- 「即禁止」は大抵良くない
- そもそも何が問題になの?
- 外部性対策の大まかな枠組み
- 対策は政府よりも民間で行うべき
- 具体的な政策提言
都議会がタバコに関する条例案があることを公表したことを受けて、タバコについての論議がまたもや盛りあがりそうだ。特に東京は2020年のオリンピックに向けて、急ピッチで規制が進められていくだろう。既に狭い喫煙者の肩身がより狭くなっていきそうだ。
消費されることが望ましくない財を、経済学用語で負の価値財という。昨今のタバコへの風当たりをみるとタバコは負の価値財であり、その他にも酒類や麻薬、ポルノ作品なんかもこれに入るだろう。
しかし、消費されることが望ましくないからといって即座に法律レベルで禁止すべきと断じてしまうのは気が早すぎる。
続きを読む政府機能を考える 第1回~政治システムの欠点~
<目次>
- 投票システムの抱える欠陥
- 自分の意見を反映させたい、でもどうやって?
- 間接民主主義の抱える欠点
- カネと公平性の問題
- トレードオフを抜け出す方法
衆議院選が近くなってきた。外に出るとあちこちで選挙カーの上で演説をしている声が聞こえてくる。「地域に根差した政策を~」「国民の為の政治を~」などお決まりの言葉が駅前に、住宅街に響き渡る。
そして色んなメディアで、どこの政策はこうだ、どこに投票すべきだ、どこはダメだ、アイツはどうだと選挙について伝えるし、嫌が応にも選挙があちこちで話題に上る。
そしてこの時期によく目にする意見が、「政治が良くなれば社会が良くなる」「国民皆が政治に関心を持ち、選挙に参加すれば世の中は良い方向に変わる」というものだ。勿論参政権は長い歴史の中で獲得された国民の権利だし、自分の望む方向に変えてくれると思う人のために使えるものを使っておくのは合理的だ。少なくとも棄権という手段では自分の望む方向に政治を変えることはできないだろう。
しかし、投票率減少などに表れているように、投票システム、並びに政治を意味がないものだと感じている人は多いのではないだろうか。
続きを読む貯金、ダイエット、勉強に共通するものってなんだ?~行動経済学とその応用~
今年のノーベル経済学賞はシカゴ大学のリチャード・セイラー教授に決まった。彼が受賞した理由は
「個人は完全に合理的には行動できないこと、社会的な背景を踏まえ選択すること、そして自分自身をコントロールできないことなど、人間の持つ特徴が個人の経済的な決定や市場にどのように影響を与えているかを示した」
とのことである(NHK NEWS WEBより引用
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171009/k10011172861000.html)。
この、「人は目先の利益や一時の感情にも基づいて行動する」という人の非合理性を経済学に持ち込んだのがセイラ―教授の専門である行動経済学だ。
ただ、これだけ聞くと行動経済学とは人々がどのように行動するかを分析するだけで、実社会でどのように役立つのかが分かりづらいかも知れない。経済学も人々の行動を分析する学問であり、その有用性にはいつも疑問が投げかけられてきた。なのでその延長線上にある行動経済学も大して実用性はないだろうと考える人がいるのは容易に想像できる。
今回は、行動経済学とはどんな学問であり、それがどのように応用できるかについて述べていく。
突然だがここで問題。貯金、ダイエット、勉強、禁酒や禁煙。これらに共通する特徴はなんでしょう。
色々あるとは思うが、まず言えるのは、やれば後々に自分の利益になるということ。そして、皆その達成に向けた行動をなかなか起こさないという事だ。
メンタル強化本のパワーは恐ろしいぞ
この本はそのタイトル通り、身の回りにいる困った人、例えば些細な事でキレる人、常に周りの人を見下す人、構ってちゃんなどに対して言い返す術について説いた本だ。
この世の悩みの多くは対人関係に起因するものであると言ってよいだろう。だからこそこういう対処術を知っておくのはとても重要だと思う。世の中には聖人君子もどうしようもない下劣な人も存在する。さらに厄介なことに、どちらの面も持ち合わせている人も存在する。
精神的な被害は勿論物質的にも身体的にもダメージをもたらす。断るのが苦手な人は詐欺に遭って金銭的に苦しむことになるし、いつも叱責や罵倒を受けている人は鬱になりかねないし、最悪死に至る。
いつの時代もこの手の悩みは耐えないので、相手に屈しないようになる、強くなる系の本は需要があり、形を変えて出てくる。「いつも一緒にいて嫌な気持ちにしてくるアイツに、ガツンと切り返せたらスッキリするのに」「押しに弱く、いつも損を食っている気がする。何とか自分を守りたい」。このような気持ちからメンタル本に手を出す人は容易に想像できるだろう。
ただ、この本を読んで思ったのが、この手の本を読んで、読者の攻撃性が助長されないかということである。
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