平凡学徒備忘録

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無条件で現金配布、あなたは働きますか? 第4回~BI導入に向けての論点~

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  • BI導入で議論されるべき点
    • ①:制度の安定性
    • ②:現金支給?現物支給?
    • ③:どのくらい支給するの?
    • ④:人を生産的に保つには?

 

 3回に渡ってベーシックインカムについてそのメリット、デメリットだけでなく、社会福祉や政府のあり方などの視点から述べてきた。前回の記事をまだ読んでいない方はこちらからどうぞ。

 

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BIはだんだん周知されてきてはいると思うし、今後たくさんの議論がなされるだろう。少なくとも、夢想であると議論にすらしないのは望ましくない。今回は、実際に導入にあたって議論されるべき点について整理していく。

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無条件で現金配布、あなたは働きますか? 第3回~シンプルな支援、シンプルな政府~

  • シンプルな政策にすべき単純な理由
  •  思い込みに反するデータを受け入れる
  •  思い込みを捨てよ、データを見よう
  •  今必要な政府とは、大きなバスケットではない

 

2回に渡ってベーシックインカムを軸とした社会保障について述べてきた。前回のはこちら。

 

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シンプルな政策にすべき単純な理由

前回述べたことをまとめると、「貧困とは単なる人格の欠損ではなく、お金の欠乏だ。複雑な支援プログラムではなくシンプルな社会保障」ということだ。現実社会、人間心理は複雑だ。しかしだからといって複雑なプログラムが必要なわけではなく、シンプルな政策でも、具体的な案にする際に厳密な検証を必要とするというだけの話である。

 

シンプルな社会保障対策は、まずその受益者にメリットをもたらす。前回述べたが、貧困層にとって、社会保障を受けようと行動することはかなり大変である。

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無条件で現金配布、あなたは働きますか? 第2回~救われるべき人、そうでない人?~

  • 「無条件で給付」がカギ?
  •  社会保障と「理想の貧困者」
  •  貧困は知能を13ポイントも下げる
  •  シンプルな設計、厳密な検証

 

前回は、ベーシックインカム(BI)のメリットやそれが解決するであろう問題について全体像を述べてきた。まだ読んでいない方はどうぞ。

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今回は、BIの「現金の無条件配布」という特徴を切り口に、福祉のあり方について述べていく。

「無条件で給付」がカギ?

前回、BIを実際に行ってみた結果について、似たような制度が真逆の結果をもたらしたことに言及した。ロンドンやオランダの実験ではBIによって人は怠惰にならず、むしろ前向きになり、ホームレスが社会的に望ましい生活を送るようになったと示している一方で、BIと似たスピーナムランド制度は人の勤労意欲を削ぎ、社会が荒れるという真逆の結果に終わったのである。

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無条件で現金配布、あなたは働きますか? 第1回~労働環境の変化とベーシックインカム~

  •  現在の労働環境は何が問題か
  •  ベーシックインカムとは何か?
  •  BIは人を怠惰にする?
  •  BIのもたらすブラック企業淘汰
  •  貧困とは人格の欠損でなく、お金の欠乏である
  •  BIは、人に選択肢を与える

 現在の労働環境は何が問題か

 労働環境にまつわるニュースはいつの時代もあらゆる場所で話題となる。先日もヤマト運輸が年末の宅配需要に伴い、アルバイト運転手に対し、時給2000円を提示したそうだ。

news.livedoor.com

このニュースはヤマトの労働者にとっては良いニュースだ。しかし、昨今ブラック企業労働生産性の低下、低賃金などのニュースを目にするにつけ、現在の労働環境は労働者と経営者どちらにとっても悪いのだろうという印象を受ける。

 

現状の労働問題は、つまるところ「あらゆる産業において生産に人が必要とならないのに、賃金を得て生活する為に色んな人が働き口を求めている」ということだ。

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政府機能を考える 第2回~政府機能と政治を変える方法~

  • 政府の4機能
  •  ①資源の配分効率の改善
  •  ①´ 経済成長促進
  • 所得再分配
  • ③経済安定
  • 政治を変える方法①:ロビー活動
  • 政治を変える方法②:NPONGO組織

 

前回の記事で、現行の政治システムの避けられない欠点を挙げ、それを乗り越えるには、政府規模を縮小すべきだと述べた。

 

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今回は、じゃあそもそも政府はいかなる機能を持ち、そしてどうやってそれらを民間が肩代わりできるようになるかについて述べていく。

政府の4機能

経済学においての政府の存在意義とは、市場内の自由な行動だけでは解決できない問題を解消することだと考えられている。そして、その問題とは以下の(3+1)つに大別される。

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タバコの問題をシンプルに解決する~負の価値財、外部性と政治機能~

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toyokeizai.net

<目次>

  • 「即禁止」は大抵良くない
  • そもそも何が問題になの?
  • 外部性対策の大まかな枠組み
  • 対策は政府よりも民間で行うべき
  • 具体的な政策提言

 

都議会がタバコに関する条例案があることを公表したことを受けて、タバコについての論議がまたもや盛りあがりそうだ。特に東京は2020年のオリンピックに向けて、急ピッチで規制が進められていくだろう。既に狭い喫煙者の肩身がより狭くなっていきそうだ。

消費されることが望ましくない財を、経済学用語で負の価値財という。昨今のタバコへの風当たりをみるとタバコは負の価値財であり、その他にも酒類や麻薬、ポルノ作品なんかもこれに入るだろう。

しかし、消費されることが望ましくないからといって即座に法律レベルで禁止すべきと断じてしまうのは気が早すぎる。

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政府機能を考える 第1回~政治システムの欠点~

<目次>

  • 投票システムの抱える欠陥 
  • 自分の意見を反映させたい、でもどうやって? 
  •  間接民主主義の抱える欠点
  •  カネと公平性の問題
  • トレードオフを抜け出す方法

 

衆議院選が近くなってきた。外に出るとあちこちで選挙カーの上で演説をしている声が聞こえてくる。「地域に根差した政策を~」「国民の為の政治を~」などお決まりの言葉が駅前に、住宅街に響き渡る。
そして色んなメディアで、どこの政策はこうだ、どこに投票すべきだ、どこはダメだ、アイツはどうだと選挙について伝えるし、嫌が応にも選挙があちこちで話題に上る。


そしてこの時期によく目にする意見が、「政治が良くなれば社会が良くなる」「国民皆が政治に関心を持ち、選挙に参加すれば世の中は良い方向に変わる」というものだ。勿論参政権は長い歴史の中で獲得された国民の権利だし、自分の望む方向に変えてくれると思う人のために使えるものを使っておくのは合理的だ。少なくとも棄権という手段では自分の望む方向に政治を変えることはできないだろう。

 

しかし、投票率減少などに表れているように、投票システム、並びに政治を意味がないものだと感じている人は多いのではないだろうか。

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