平凡学徒備忘録

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評価経済は誰を幸せにするか?~資金需要とイノベーション~

 既に二回に渡ってVALUについて考えてきた。前回はVALU価格の変動と資金調達との関係について考えてみた。まだ読んでいない方は、是非読んでみて、どうぞ。

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 今回は、評価経済が経済全体にどのようにプラスの影響をもたらすか、それがもたらされるにはどのような条件が必要なのかについてより具体的に考えてみる。

 

 

どこに資金が流れるか?という観点

現状は配当が少ないなどの理由で購入者にとってはあまりメリットのないと言われているVALUだが、個人的には画期的なモノやサービスを生み出すきっかけになるという意味でメリットがあると考えているので、十分社会に役立つサービスになると思う。その理由を説明していこう。

世の中には、企業活動としてではなく、個人の趣味として高性能なメカやソフト、素晴らしい楽曲やアニメーションを出している人がたくさんいる(「ニコニコ技術部」で検索してみよう)。手軽に資金提供できる環境があればこういった人に資金を提供し、次なる製品を出してもらうことだってできるし、技術を持っている人だって、そこで調達した資金を元に自分の好きなことを仕事にできる。その資金調達の場としてVALUは大きな役割を果たすと思う。

ニコニコ動画のタグには「振り込み詐欺」ならぬ「振り込めない詐欺」というものがあるが、VALUを通じてこれを解消することができる。既にニコニコは個人チャンネルへ課金できるサービスを提供しているが、投機として成り立つものではない。しかしVALUではそれを通じて資金を提供したあとも、購入したVALUの値上がりで利益を得ることができるし、加えて、SNSのアカウントさえあればどんなコンテンツサイトを利用していても資金提供できる。そういった意味でも資金調達の手段として優れていると思う。

VALUはそもそも個人を応援することを目的としたサービスであるが、新しいものを作るのにそこまで資金が必要ないなら、そこで集まったお金も余計に溜まるだけになってしまう。生産にあまり資金を必要としないところにお金が集まるよりも、もっと資金需要の高いところに回して新しいモノ、サービスをつくってもらった方が生産的、効率的である。どうせ資金が集まるなら新しいモノやサービスの生産に使われた方がよい。

メカ作りや音楽などのアート作りは、生産にあたって多くの設備を要し、従って資金需要が大きい。例えばブログ記事はPC一台とネット環境があれば生産可能だが、メカやアート作りは製作環境などの資本が必要で、生産に万単位のお金がかかる。

勿論ブロガーを一種の資本のようなものと考えれば、その生活費や取材にかかる費用という意味で資金需要があると言えるし、VALUで生活費を賄い、記事を無料で提供するような生産モデルが不可能という訳ではないが、それは何を生産するにしても共通する話である。

VALUは資金需要を解消できるか?

しかし、VALUの発行上限がSNSのフォロワー数によって決められており、追加の発行が認められてない状況を考えると、ある程度の資金調達にはすでに有名であることが条件となる。つまり、いくら資金需要や潜在的な可能性があっても、認知度がなくては資金を調達できない。現在のVALUではインフルエンサーと呼ばれる人たちが目立っているが、それは既に多くのフォロワーを抱えており、多くの資金を調達できる見込みがあるからである。評価経済とは、その人への評価がモノやカネを呼び、結果評価が価格という形で表されている社会のありようのことである。ある程度評価を得ていない人には低い価格しかつかない。つまり、少ない資金しか調達できないことになる。

となれば、無名はこの恩恵を受けない。つまり、VALUによって無名のアーティストや技術屋が恩恵を受けることはない。

しかし、これらの人は生産にコストが多くかかり、資金需要が高い。つまり、資金調達する必要が高い人たちといえる。

これら無名の技術屋、アーティストたちが実際に必要資金を調達し、新製品の生産、更なる資金調達のサイクルが確立する為にはまず、認知度が上がる必要がある。なのでまずは彼らが人の目につき、評価を受ける場所、プラットフォーム的なものの存在が必要になる。

今現在でもニコニコ動画YouTube、掲示板やブログ、SNSといった場はある。しかし、情報は分野ごとに分けて一ヶ所に集めた方が、一つ一つの情報が目立ちやすく、また、そのプラットフォームにて置いてある情報が事前に分かるので、必要な情報を見つけやすい。そして知識が共有されているので、価値が正しく評価されやすい。

例えばこれなんかはネット上の評価を見る限りすごいらしいが、アニメ製作をしたことのない素人からすれば何がスゴいのかよく分からない(手軽にアニメを作れるのはわかるが、今までそういったツールは無かったのだろうか?)。

youtu.be

BitCoinなんかも画期的な技術ではあるのだが、知識の無い人にとってはその価値は分からない。しかし知識が共有されている場ではキチンと評価されやすい。

情報共有の場が今後どのように変化していくかは分からないが、情報の流れ方と評価経済の社会に与える影響は不可分であると思う。良質なものが素早く、そして正しく評価されるようになれば、より早く、適切なところへお金とサービスが動くようになる。

良い製品を作れる人のデモ動画やそのコンテンツが多くの人に知れ渡り、評価が蓄積される。一定以上フォロワーが増えれば十分に資金を集められる調達力が整う。そしてVALUを売り、資金が集まればそれを元手に新たな製品が作れる。そしてVALUが値上がりし、さらに新規市場にて資金調達が可能になり、面白いものをどんどん作る流れができてくれば、皆が幸せになる評価経済が実現する。

 

どのように発展していくか

評価経済イノベーションのきっかけとして機能するかは、どこに資金が流れていくかによる。ブロガーとアーティスト、エンジニアでは、後者の方が資本を要する分だけ資金需要がある。ならばそちらが資金調達した方が効率的だ(ブロガーも金がかかるイベントを企画すれば資金需要が発生するが)。要するに、資金需要の高い人に多く資金が流れる方が世の中の生産量は高くなる。ただ、評価経済はそういったことお構いなしに、人気のある人に資金が流れる。

そんな中でも、うまく資金需要と供給が一致すればVALUは役立つサービスだという評価が立つだろうし、一致しない状態が続くと、一般人には縁の無い、単なるネット有名人のマネーゲームという評価が立ってしまうことになる。

従来の経済では、株式や借り入れなどで資金を調達し、それをもとに企業が財、サービスを生産、販売する。しかしいくら面白そうな事業であっても収益性や将来性が無いと判断されれば資金調達は達成されない。

しかし、評価経済においては、収益性とか経営力がなくとも、面白さや知名度、人気度によってお金が集まる。そしてその主体は個人である。なので従来の経済よりも資金を調達しやすいし、イノベーションも起こりやすい。

このように、VALUは新しいモノを生産するきっかけになりうる。認知度が上がってユーザー層が変化し、真に役に立つサービスになるのか、それともマネーゲームで終わるのか、今後を見ていきたい。

 

ちなみに、VALUはBitCoinという仮想通貨にて決済される。ということで、BitCoinについて興味を持つ人も多いだろう。私も友人の影響で前々からこれについて興味があったため、この本を参考に調べてみた。多少難解だが、参考書として十分役立つ。

仮想通貨革命---ビットコインは始まりにすぎない

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BItCoinでのモノの売買があまり主流でなく、円で決済する人が多い現在の状況では、この点が投機の要素としても効いてくるような気がする。VALU価格の値上がりとBitCoin自体の値上がりが合わさり、円単位で多くの利益を獲得するなんてことも起きるかもしれない。そういった意味でもVALUは楽しみである。

 

追記)

新たなるFinTech系のサービスでCashとPayDayが出たが、個人的にあれらは画期的でも無いし、あまり意味の無いどころか失敗する人が多く出てきそうなサービスだと思っていて、あれには否定的な立場である。