平凡学徒備忘録

Know your enemy with warm heart and cool head.

メンタル強化本のパワーは恐ろしいぞ

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賢く「言い返す」技術: 人に強くなるコミュニケーション (単行本)

賢く「言い返す」技術: 人に強くなるコミュニケーション (単行本)

 

 この本はそのタイトル通り、身の回りにいる困った人、例えば些細な事でキレる人、常に周りの人を見下す人、構ってちゃんなどに対して言い返す術について説いた本だ。

この世の悩みの多くは対人関係に起因するものであると言ってよいだろう。だからこそこういう対処術を知っておくのはとても重要だと思う。世の中には聖人君子もどうしようもない下劣な人も存在する。さらに厄介なことに、どちらの面も持ち合わせている人も存在する。

精神的な被害は勿論物質的にも身体的にもダメージをもたらす。断るのが苦手な人は詐欺に遭って金銭的に苦しむことになるし、いつも叱責や罵倒を受けている人は鬱になりかねないし、最悪死に至る。

いつの時代もこの手の悩みは耐えないので、相手に屈しないようになる、強くなる系の本は需要があり、形を変えて出てくる。「いつも一緒にいて嫌な気持ちにしてくるアイツに、ガツンと切り返せたらスッキリするのに」「押しに弱く、いつも損を食っている気がする。何とか自分を守りたい」。このような気持ちからメンタル本に手を出す人は容易に想像できるだろう。

ただ、この本を読んで思ったのが、この手の本を読んで、読者の攻撃性が助長されないかということである。

 

男子は誰しも(女子もそうかも知れないが)、一度くらいは格闘シーンや格闘術に関する動画なり書籍に触れ,そして教室内に入ってきた不審者を華麗に鎮圧するシーンや道端で不良に絡まれ、かったるい感じを醸し出しつつ撃退する妄想をした経験はあると思う。多分大人になってもそういう妄想はする。

ただ、まだ妄想の範囲に留まっているうちはよいのだが、それを元に引き起こした行動が悪く出ることもある。実際に、格闘シーンを見た男性は攻撃的な振る舞いをしやすいという研究結果も出ているそうだ。

ns.umich.edu

メディアで目にする格闘、暴力シーンと攻撃性の関連についてどこまで調査が進んでいるのか分からないし、今回のトピックと外れるので詳しくは踏み込まないが、男性諸君においては、格闘シーンを見て興奮し、多少憧れを抱いてしまうという心理は理解しやすいと思う(筆者自身、居合い切りや剣術格闘シーンを観て実家にある木刀を取り出したもんである)。

で、そこで今回思った、メンタル強化本が暴力性を助長するのではないかという話になる。特にこの本で、攻撃性を煽るような表現があるのが気になった。特にこれが現れてると思った部分を、p197から引用する(太字は原文まま)。

しかし、落ち着いて考えれば嫁のほうが勝者だということがわかるはずだ。 圧倒的に若いし、姑のほうが早く死ぬ確率が高い。「女」が「古い」と書いて「姑」。生物としては、嫁のほうが絶対的に勝っているのだ。

この本にて、どこでもマウント取りたがるタイプの人への対象法が取り上げられていたが、この発言こそその典型例ではないだろうか。

勿論、すべての文章がこのような表現になっているわけではない。それは気をつけてほしい。

恐らく筆者も、相手に気持ちで負けてたら言い返すも何も出来ないので、取りあえず心理的余裕を持たせるために少し言い過ぎなくらいの表現をする必要を感じ、このような表現を採用したのだろうと思われる。

実際、喧嘩は相手の心をくじけば勝ちという側面もあるので、最初から気負けしてはダメだというのは正しいような気がする。そのためにまずは心理的余裕を持つ必要があるだろうし、それを持つために相手に勝っている部分を確認しておく必要があるとも言える。

ただ、最初は護身術だと思っていても、いつの間にか単なる攻撃の手段となってしまうことは往々にしてあり得る。最初はジェダイだったが闇堕ちしたダースベーダーのような存在は、スクリーンの中だけに留まらないのである。暴力シーンに触発されてただの暴力好きになってしまう子どものように、メンタル強化術に触発されて、周りの人にマウントを取る、心理的に負担をかけるといったことがないよう、気をつけるべきである。

同じメンタル強化系の本でも、こちらの方がまだ表現がマイルドだったので、最初はこちらを読んだほうがいいのかもしれない。何か一つに傾倒するのは視野を狭める危険がある。

 

 特にこちらは数字や論理を用いた言い返し技術や、ビジネスシーンでの使い方にも言及しており、その点でも役立つとは思う。ただやはり、悪用しないような心がけを必要とする。

 

何であれ、ムカついた時、特にそれが重要な場面で起こったときはまずは冷静になることが大事だ。うっかり相手の挑発に乗って足元をすくわれては負けである。文筆家の佐藤優も、自分の心理状態や問題を俯瞰して分析しているうちに怒りはおさまっていくと述べていた。食べる、寝るなどして身体的ストレスを取り除くのも有効だろう。

 

ちなみに、自分の置かれている状況を分析、把握するのに、経済学でも用いられてるゲーム理論という分析手法は役立てられるかもしれない。興味あったら是非ご一読を。

 

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