平凡学徒備忘録

Know your enemy with warm heart and cool head.

不安商法に呑まれないために

 コロナウイルスが日々取り沙汰されており、その混乱に生じてデマも散見されるようになった。アオサが有効だの27度のお湯を飲むのが有効だのなんだの。今まで自分の体温測ったことないのかと聞きたい。

こういったデマが広まってしまう根本には、人間がどうしても抱えてしまう不安感情がある。不安でどうしたらいいのか分からない時に、「これが答えだ」と提示されてしまうと、それを得て安心しようとしてしまうのが人間の性であろう。

そこで、倫理観の欠如した人間はこの心理をついてビジネスを行うわけである。過剰に不安を煽り、焦りから判断力の低下した人間に「解決策」を売りこむ、いわゆる不安商法というやつである。筆者自身の話をすると、不安を煽られて不本意ながらセミナーやサークルに参加したことがあるし、赤の他人が迫られているのを見たことがある。すっかり忘れていたのだが、その時の様子は過去に書いたこの記事で述べている。 

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「○○学って役に立つんすか?」に対抗するために、「○○学って役に立つんすか?」って考えてみよう

ようやく卒論提出と就活が終わりまして、時間に余裕ができたのでかなり久しぶりの投稿です。就活とか卒論やっていく中で思ったことも色々あるので、それもそのうち記事にしようと思います。

 

さて、今回言いたいことは全部タイトルにある通りです。Twitterでは学問の軽視に対して対抗する風潮がまだありますが、その外ではそうでもないようでして。「ふん!○○学っていうのかい?贅沢な名前だねえ」「○○学部なんて要らないんだから潰してしまえ、もっと実学を教育すべき」なんておっしゃる方がいても驚く人はいないでしょう。まあこれは極端だとしても、「金にならない学問なんて大学でやらずに、個人で研究してりゃいいんだ」くらいに考えている人は大勢いることでしょう。

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革命家YouTuberから考える~何故勉強をすべきなのか~

  • そもそもなんで勉強ってするの?
  • 勉強の意味は何か
  • 勉強することのもう一つのメリット

そもそもなんで勉強ってするの?

つい最近、ある小学生YouTuberの「算数は電卓でやればいい、漢字はググればいい。学校で勉強しなきゃいけないわけではない」という趣旨の発言が話題になった。

abematimes.com

こういった意見がメディアで取り上げられ、SNS上では色々な反響が見受けられた。

この意見そのものについて言えば、誰もが子どもの頃に一度はこういう事を思っただろうと思うので、発言主であるYouTuber自身を批判するのはお門違いだと思う。それに、彼は「学校でやることだけが勉強じゃない」と言ってはいるが、勉強それ自体は否定していない。とはいえ、電卓やグーグルを使えることで解決できる問題は限られているし、正しい判断ができるわけでもないことは理解していればいいのだが。

また、テレビやSNSでこの話題を見た子どもたちも、親や周りの大人に同じようなことを言ってるだろう。彼の発言を「勉強する意味がない」という意味に誤解していることも考えられる。私も実際に、塾講師のバイトをしていた時にこういったことを生徒が言っているのを見たことがある。

この話題から考えるべきは、発言主がどうこうといったことではなく、こういった子どもの考えに大人がどう答えるかだろうと思う。

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資源配分の科学と「市場の失敗」の拡張

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配分の科学としての経済学

経済とは何か。しばしば問われるこの疑問は、回答者の興味関心によって定義の仕方が異なってくるが、今回はこのように定義してみる。経済とは、人が様々な物的資源や生産設備、労働力を投入して財を生産し、生産された財がそれぞれの店に流通して、最終的に消費者に財が配分される、という一連の流れのことである。そのような経済の中で、生産者はそれぞれの経営資源をどのように配分するかを決定するし、消費者は自分の貨幣という資源をどのように配分するかを決定する。つまり、経済学とは資源配分の科学である

そんな資源配分の方法として広く用いられているのが価格メカニズムであり、

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モデルを用いて考える、ということ~モデルの使い方と注意点~

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経済学でやることとは、経済現象の説明であり、これがすなわち経済分析である。分析というのは、数理モデルを使わずには行えないわけであり、経済学についての本をめくれば、何度も数式やグラフによる解説が出てくる。

さて、本ブログで度々嘆いているが、このモデルを使って考えるということについて、経済学はよく批判される。「こんな数式やグラフを使っても、議論が複雑になるだけだ」「現実は複雑なわけで、単純化したモデルに意味はない」「人間は合理的でないし、仮定が非現実的だ」などといったものである。そして、これまた残念なことに、こういった主張、疑問について正面から向き合って説明がされるようなことは少ないと言っていいだろう。

そのため、本ブログではこういった批判に対して度々反論を述べた。

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モデルを用いて考える、ということ~ドライヤーの故障と経済学~

ご無沙汰でございます。留学前の準備やテストなどに追われ、あと書くネタと気力が無くなっていたので久々の更新となってしまったが、今後もなるべく書き続けていこうと思う。

 

さて、前にも本ブログで紹介したこの本を最近また読み返してみた。その中で考えたことを今回は綴っていこうと思う。

エコノミクス・ルール:憂鬱な科学の功罪

エコノミクス・ルール:憂鬱な科学の功罪

 

この本は経済学の使い方や思考パターン、学問としての発展など経済学の方法論について、広く述べた本である。著者のDani Rodrik教授は国際経済学や政治経済学、開発経済学を専門とし、現在ハーバード大学に在籍している。経済学入門者や、経済学に対して批判的な考えを持っている人は必ず読んでほしい。方法論の全体像について知ることは、今後の勉強にきっと役立つだろう。

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経済学はどう役に立つか~効率性と市場の失敗~

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出典(京エコロジーセンターホームページより)

http://www.miyako-eco.jp/highmoon

 

経済学は役に立たないとよく言われる。経済学という字面だけを見ると、経済を学ぶのだろうというのは分かるが、結局学んでどう役に立つのかは分からない。経済学というのはどうやってお金を稼ぐかとか、株価の予想でも行っているのだろうが、結局、経済は複雑なのでそんなことを分かりっこない。しかも、合理的経済人とかいう現実離れした仮定を置いているらしい。このように考えて、経済学なぞ役に立たぬという結論に至るわけである。

そんな解決しようもない疑問を立て、分かりづらい専門用語を作り、研究対象は自然現象でもないのにも関わらず数式を多用している様を見たら、どうも胡散臭い学問だし、結局経済学では何をやっているのか分からないというのが専門外の人の率直な感想だろう。

この類の主張は、まず「経済学はお金儲けを考える学問だ」と誤解している。残念ながら経済学を学んでもお金儲けの直接の役に立つわけではない。

 

では経済学で扱う主要な問題は何かというと、「有限な資源をいかに効率よく配分するか」ということである。

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