平凡学徒備忘録

自分が思い付いたことを忘れないために書いていきます。経済学専攻の大学生。

何故自販機とセブンでコーヒーの値段が違うのか?~価格競争と一律価格~

先日、品川駅で電車待ちをしていたときのことである。

その日は雨の影響で電車が遅延しており、フォームに着いてから少し時間があった。その間手持ち無沙汰で過ごすのも何となく気が引け、不意に缶ボトルコーヒーが飲みたくなったので、自販機に向かった。

その時気づいたのだが、自販機で売られているコーヒーの値段は、駅以外の場所で見かける自販機のよりも高く設定されている。理由は簡単だ。高く値段をつけても売れるからだ。電車待ちをしている間にコーヒーが飲みたくなった場合、外のほうが安いからとわざわざ一旦改札を出て買いにいく人はあまりいない。つまり、実際には地理的条件があるからこそ、強気な価格設定ができるということである。

レゴランドで食べ物、飲み物がかなり高く売られていたのも、外部から持ち込み禁止にしており、喉が渇いた場合、ランド内で買わざるを得ない状況にしていたからである。映画館でコーラが500円で売っているのも同じ理由である。外のコンビニの方が安いからと、チケット買ったあとに外で飲み物を買う人はあまりいない。

ただ、駅のコーヒーの価格が不思議なのは、全く同じ商品であるにも関わらず、構内に設けられた近くのセブンイレブンと価格が異なっているということにある。

 

プレミアムボスが、自販機では160円、セブンでは150円で売られている。品川駅を利用したことのある人なら分かると思うが、自販機に来たらセブンイレブンが近くにあることは分かるし、両者の距離はそこまで遠いわけではない。つまり、先ほど例にあげたレゴランドや映画館と違い、2社が競争している状態にある。

経済学では、市場競争が起こっている場合、両者の販売価格は同じところにまで下がると考えられる。セブンと自販機の間はさほど離れていないため、両者で売られている同じコーヒーの価値は同じであるにも関わらず、自販機価格はセブンのよりも高い。であれば、合理的な消費者はセブンでコーヒーを買うだろうというのが経済学の常識だからだ。

この結果、自販機ではコーヒーが売れなくなる。となると、自販機価格を同じところまで値段まで下げないと売れない。価格競争の結果、両者の値段は同じになるはずである。

同じ商品なら安い方を消費者は選ぶ。多分このこと自体は当たり前だと受け取られるだろうが、現実には、少なくとも品川駅においては、そうなっていない。

 

これには2つの理由が考えられる。

1:駅は混んでいるため、セブンだけでは客をさばききれず、必然的に自販機に客が来るため、高くても売れる

2:自販機はサントリーのものでないため、業者が余計に入ってる分若干コストがかかる 

この2つの理由は、多分同時に成り立っているものだろう。品川駅の自販機には、サントリー商品だけじゃなく、コカコーラやポッカとかの商品も並んでいる。ということは、これはサントリー直営の自販機ではなく、色んな飲料メーカーから商品を買って売っているタイプの自販機だろうと思われる。この場合、直営と比べて仕入れ工程が一つ多いため、少し価格が高くなることが予想される。

また、このタイプの自販機の場合、他の飲料メーカーと違って販売ルートが自販機頼みなので、少し高い値段を付けないとやっていけないのかもしれない。

ということで、自販機の値段は少し高くなる。しかし、セブンイレブンの混雑を避けたい客がいる以上、10円高くても自販機でコーヒーを買う客はいるし、なんとかやっていけるかも知れない。

 

しかし、ここで疑問になるのが、次の点だ。何故、セブンは自販機と同じ価格まで値上げをしないのだろう?

自販機でコーヒーが160円で売れるなら、セブンでだって160円で売れるはずだ。10円値上げしたほうが、わずかだが利益は上がるし、なおかつ、値上げしたところで自販機と価格が同じになるだけなので、顧客が流出するとは考えにくい。つまり、値上げについてデメリットが見当たらない。となれば、セブンとしては160円に値上げするべきだという結論に至るはずである。

値上げすることが合理的だと考えられる以上、何かそうできない障壁があるのではないかと考えられる。もしかしたら、コンビニの商品価格を、店ごとに自由に設定できない特殊な事情があるのかも知れない。ローソンが地域別価格制を導入したのは最近のことらしいし、品川駅セブンでは、まだ品川価格を付けることができない何か特殊な事情があるのかも知れない。

ちなみに何故コンビニが地域別価格を設けていなかったかというと、メーカーの商品卸売り価格が全国一律だからだ。卸売り価格が変わらない以上、コンビニが十分収益をあげられるような価格設定には下限が生じる。本社としては好き勝手に価格設定された挙句店を潰されるようなことは避けたいだろう。結果として、地域ごとに収益のバラつきはでるものの、全国平均的には収益を上げているというビジネスモデルを採用していると考えられる。

 

さて、今回は、経済学の常識に反した日常の事例について、経済学的に説明してみた。「差異を見つけることが出発点だ」というのは経済学論文テーマを考える上でよく言われるアドバイスである。経済現象を完璧に説明できるモデルを作るために、「現状考えられているモデルがどのくらい説明できているか?」と同じくらいに、現状考えられているモデルから、現実はどのくらい離れているか?」という疑問を持つことが、経済学と学ぶ身には必要なのかも知れない。

 

日常の疑問を経済学で考える (日経ビジネス人文庫)

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追記:今回の疑問をこの本の著者に取り上げてもらったら、どのような答えが得られるかなぁ