平凡学徒備忘録

自分が思い付いたことを忘れないために書いていきます。経済学専攻の大学生。

経済学をざっくりとまとめてみる~市場と経済学の誕生~

経済学というものについていくつか記事を書いてきたが、一口に経済学といってもその分野、内容は多種多様である。経済学という名前を冠している以上、何かしらの形で経済、つまり財、サービスの生産、ならびに交換といった行動について分析するものなのだが、発想や分析手法は異なる。

そもそも、分析対象である経済とは何なのか。経済というのは一言で表せばモノの分配ネットワークだ。商品を売買するという形で財、サービスが必要な人のもとに届けられることを経済活動というし、経済が活発になるというのはそれらのやり取りが多くなり、欲しいと思う人がそれを得られるようになるという状況である。

経済学の目的はそれらモノのやり取りを通じて社会全体の満足度、効用を最大化することである。なので、資源の効率的配分というのがいつも問題になる。財、サービスがあちこちに移動した結果、皆がそれぞれに望むものを手に入れられた。これが効率的ということだ。例えばある人にとって余分なモノでも、誰かがそれを欲しているかも知れない。ならば欲している人に届けられたほうが、社会全体で見たときの効用は大きくなる。

 

貨幣制度ができる前は、これを物々交換で行ってきた。しかし、地理的制約からこの交換は誰が何を欲しがっているのか簡単に分かるような狭い範囲でしか成り立たない。市場規模にどうしても限界が出てきてしまい、本当はもっと望ましい取引相手がいたにも関わらず、それが実現できなかった。

そこで、貨幣という、価値を表すチケットが誕生した。これのおかげでより広い範囲で財、サービスのやり取りを行えるようになり、欲しいものは商品に相応するチケットを渡すことで得られるようになった。商品の代わりにチケットを得た人は、そのチケットを自分の望む商品と交換し、結果として皆が望むものをある程度手に入れられる仕組みが出来、これが今日まで続く経済システムとなっている。

ちなみに貨幣の誕生によって経済活動の範囲が大きくなったという話は、以前に話題になった「サピエンス全史」にも載っている。 

 

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

 

 

こうして人々は自分の望むものを交換すべく一箇所に集まり市場を作り、そこで自分の望むものを手に入れるようになった。

このように、人々が自由にモノを持ち寄り、貨幣を交換する場、市場の誕生が経済学の始まりだ。そして経済学はまずこの市場を分析することから始まった。このような市場単位で行われる経済活動を分析する学問がミクロ経済学である。なので皆が経済学と聞いてまず目にする需要供給曲線はミクロ経済学の勉強である。

この貨幣を用いて市場で財、サービスを交換するメカニズムは長らく万能であるかのように考えられた。まずは、市場での競争によって高品質、低価格な商品が出回るようになるという考え方である。値段が同じならばより高品質な商品のほうが好まれるし、同じ品質ならより安いほうが好まれる。結果として皆が望むものを生産する人に貨幣は集まり、そうでない生産者は商品が売れず市場から撤退することになる。そして市場では皆が望むモノが供給され続ける。

また、市場内で足りないもの、過剰なものは自然と量が調整されるだろうという考え方もある。例えば小麦のA円での需要量が変わらないにも関わらず、生産量が何らかの理由で減ってしまった場合、小麦の値段がA円より上昇する。今までより多少高い値段で買ってくれる人に商品は優先的に行き届き、確実に小麦粉が欲しい人は高い値段で買う必要があるからだ。結果として小麦粉は値上がりする。

小麦粉が高い値段で売れると分かれば、そこで一山当てようと小麦粉を売り始める人が新たに出てくるし、そこに投資する人も出てくる。このようにして小麦粉が売られる量が増え、不足は解消される。もし仮に新たな小麦粉販売者が増えない場合でも、需要者は小麦粉不足に適応しようと小麦の代替品を探して買うし、供給者は生産量を増やそうと技術革新を行おうと研究開発を行う。このように需要者、供給者が変化に対応しようと行動することで結果的にバランスが保たれる。

ちなみにこれら需要、供給量の関係で決定される価格や貨幣の重要性について以前記事にした。参照されたし。

usamax2103.hatenadiary.com

 

この機能の発見は、様々な分野で応用された。例えば教育の分野におけるバウチャー制度なんかがその最たる例だ。これは進学先を考える家庭にチケットが配られ、自分たちの希望する学校にそのチケットを渡し、教育サービスを受ける。そのチケットの量によって学校は給付金を受けられたりするので、多くのチケットを獲得した、すなわち多くの消費者が求める学校が有利になる。

教育サービスは行政が税金を使って運営しているので、教育サービスの質を上げても収益は変化しない。となると質の悪い学校ばかりになってしまうと考えた人たちがこの制度を支持した。教育と経済学はあまり関わりがなさそうだが、市場での競争原理によって質の悪い学校をふるいにかけようという話である。

と、このように競争原理を導入することで、勝手に質の良い低価格な商品が出回るようになると、多くの経済学者や政治家が考えた。なので政府の規模を縮小し、市場を自由にしようという動きは色んな業界で見られたし、今も見られる。

ただ、経済学の始まりでは万能薬のように思われた市場メカニズムが上手くいかない、逆に弊害をもたらすということも、様々なイベント、経済学の発展によって分かってきた。次回はそんな事例とその結果生まれた経済学の分野について考える。