平凡学徒備忘録

Know your enemy with warm heart and cool head.

営業インターン(笑)に行ったら品川駅でぶっ倒れた話 第2回

前回の続きである。まだ未読の方はこちらから

 

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(続き)その日は、インターン前に知人と会っていたが、どうにも嫌なことを言われ、業務に向かう前から不機嫌であった。お前の考えてることは間違っているだの、自分を否定されるような心持ちがしたが、反論の言葉も思いつかず、その気力もなかった。

 

そして知人と別れ、駅に向かう途中で見知らぬ人に呼び止められた。不運は重なるものである。聞けば置き引きにあったので旅費を貸してほしいとのことである。正常な思考と十分な知識があれば、警察またはJRに行き、事情を話せば移動はできるとアドバイスもできたのだが、不機嫌さと業務に間に合うかどうかの焦りもあり、貸してしまった。結論から言えばそれは詐欺であったのだが、人間とはかくも騙されやすいものかと今もなおその愚かさを恥じている。

かくして心にどんどんとストレス、焦り、怒りを溜めながらオフィスに到着。何とか業務は開始できたものの、結局その日は一件も獲得できなかった。

そして、ストレスを溜めに溜めた私に止めを刺したのは、業務終了後に言われたアドバイスであった。「目標架電数(一日にかけるべき電話件数)に達してないよね?もっと改善して」とのことである。

この言葉を聞いた途端、私の心は折れた。

確かに、件数を稼ぐには電話をかける数を増やすのがもっとも早いし実行しやすい。ただ、業務スタート前のミーティングや、思いがけず話が長引くこともあり、その日はどうやっても実現不可能なアドバイスであった。ここまで不条理な言葉を投げかけられても、反論するわけにも、またその気力すらなかった。頭を殴られたような感覚を覚えながら帰路についた。社会人になれば多分このくらいのことは言われまくるのだろうが、大学2年生の感覚なので、大目に見てほしい。

沈む気分のまま山手線に乗り、品川まで少し眠りについた。そしてアナウンスで目を覚まし、車外に降り立った。その瞬間、猛烈な吐き気と眩暈に襲われた。背筋には悪寒が走り、足には力が入らず、千鳥足になりながら階段まで這いずった。幸い嘔吐や気絶には至らなかったが、しばらく動けず、周りの人に駅員を呼んでもらった。なんとか体調が回復し、京急線に乗り換え、電車で揺られているうちに、何故だか涙が溢れて止まらなくなった。前に座っていた人が見かねて席を譲ってくれた。涙でまともに口がきけなかったが、感謝しかない。

どうにか家に着いたが、翌朝目覚めるとどうも頭が重い。それにプレーヤーから流れる音楽がいつもより半音ほど高く聞こえる。耳がおかしくなったようだ。ああ、これはダメだと思い、上司に電話。結局最終日は出勤せぬままインターンプログラムが終わってしまった。

 

以上が事の顛末である。幸い親戚のお見舞いなどのおかげで2週間ほどで体調は戻ったが、この経験は今でも恐怖である。書いてるだけで嫌になる。ストレスがここまで影響を及ぼすとか、自分がそんな目に遭うとは思っていなかった。うつ病の人はさぞや苦しかろうと思わずにはいられない。それに給料はきちんと支払われたしサービス残業も無かったのが幸いであった。

以上の体験を踏まえて気付いたことがいくつかある。

まず、就活ビジネスや、ビジネスについてのビジネスは、一人の学生が良いように回され、顧客にされること。そもそもの始まりはセミナーである。そこを入り口に、どんどんと流されていった。善悪はともかくとして、それが彼らのビジネスモデルなのである。人手が集まらなさそうな職場にも、そういったルートで人員が提供される。あのままいたら、有料セミナーなど受けさせられていたかも知れない。勿論ネットで見かけるサービスが全てそうだとは言わないが、こういった形のモデルもあるということは知っておいた方がよい。貴方に近づいてくる人は、何かしらの目的を持っている。それは友好的なものかも知れないし、邪悪さに満ちたものかもしれない。用心するに越したことはないし、大体、見知らぬ人に近づかれて怪しいと思うことは失礼でも何でもない、当たり前の事である。

また、インターンとは名ばかりだったりする。職場はアルバイトが多数を占めていたし、他にもっと学生がインターンの名目で得られる貴重な体験はある。それに自分で考えて行動することではなく、マニュアルに従うことが、将来の時分にどう活きるのか。せいぜい滑舌がよくなるくらいである。勿論インターンも会社の利益になるよう設計されているので消費者目線で語るには限界があるが、学生にもっと有益な体験を提供している企業もあるはずである。

そして、選択肢は常に確保しておくこと。当たり前だが、いかなる場面においても選択肢は多い方がよい。もし無い場合は、確保できるまで時期を待つべきである。もし私が誘いを受けている時点で他のインターンに応募していたら、別のルートを辿っていただろう。選択肢の無い人は、提示されるものに従うか、従わないかしかない。流されるか留まるかしかない。そして大抵勧誘の言葉として使われるのが、「今のままでいいんですか?」である。この殺し文句は、意識の高い人ほど刺さる。「新しい自分を発見できるチャンスを見逃すんですか?今のままでいいんですか?」と、眼前に2択を突きつけられ、それ以外の選択肢を考えられなくなる。これはゲーム理論など、今勉強している分野の話になるので、後日また改めてまとまった話を書こうと思う。とにもかくにも、オプションは多いほど良い。交渉材料は、時間をかけてでも確保すべきである。そのためにも、強くハッキリとモノを言う能力も磨いておくべきである。留保、断り文句を用意しておいたり、断ることを正当化する心構えみたいなのも持っておくべきかも知れない。気弱さは損である。

加えて、何かおかしい、肌に合わないと思ったら辞めるのも手であると思う。よく少なくともアルバイトは3ヵ月、新卒で入った会社は3年続けろと言われるが、続けて心身不調になったところで誰も責任を取ってはくれない。理想を追い求めすぎるのは良くないし、どこかで折り合いをつけねばならないが、最悪の事態を避ける為に、防衛ラインは引いておこう。戦略の基本である。今私は塾講師として働いており、自分の至らぬ点に嫌気が差し、辞めたくなることもあるが、何だかんだ1年以上続いている。ある仕事に向かないとしても、何もその他のすべての仕事に向かないということにはならない。まさに「フレンズによって得意な事は違う」のである。

以上、酒の勢いに任せて駆け足に書き連ねてしまったが、大事だと思ったことはあらかた書き尽くした。もし質問等あればTwitterやコメント欄で気軽にメッセージを送ってほしい。

これを読んで私と同じような不幸を辿る大学生が一人でも減ることを祈るばかりである。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とはビスマルクの言葉であるが、失敗をわざわざ貴方自身が体験する必要はない。私みたいな愚者の体験を歴史として見て学んでいけばよいのである。

 

(追記)

プロバイダ契約代理って、すべての家庭にプロバイダ契約し終えたら、どうするのだろうか。将来的な収益ってどのように考えているのだろうか。気になる。